野球肩・投球障害肩


野球肩

  • 野球の投球動作で肩に痛みが走る
  • ボールを投げると数日肩がだるく、鈍痛が残る
  • 水泳でクロールのリカバリーの時に肩が痛い
  • テニスやバレーボールでサーブの時に肩が痛い
  • 肩の痛みがなかなか良くならず1ケ月以上経っている
  • 整形外科や接骨院で治療を受けているが変化が出ない

野球肩・投球障害肩とは

野球肩は、野球の投球動作によって生じる「肩関節まわりの痛み」と「運動障害」で、フォームの崩れやオーバーユースが原因とされています。

野球だけでなく、投球動作やスイングスポーツでも同様な障害が生じます。代表的なスポーツは、水泳・ソフトボール・テニス・ハンドボール・バレーボール・ラグビー・ゴルフなどです。

野球での投球動作は、他のスポーツよりも扱うボールが小さいため、複雑な肩の動きが可能となる分、多くの野球選手が肩の痛みを経験しています。

一回の投球動作で肩を傷めることもありますが、多くの場合、繰り返しの投球動作により、肩に違和感や鈍痛、そして鋭い痛みに発展していきます。

通常は投球時に痛みが出ますが、症状が進んでいくと、安静時でも鈍痛があったり、日常生活で肩のだるさや腕が上がらなくなったりします。

一時的な肩の違和感や筋肉痛のような筋肉性の痛みであれば、肩を休ませることで比較的早期に改善しますが、腱や腱板の炎症やルーズショルダーなどの肩の不安定性がある場合、自然治癒だけでなく、治療やコンディショニングが必要になります。

肩の痛みが出る場所

どの組織を痛めているかによって、投球動作による肩の痛みの場所は違います。おおよそ「肩の上部」「肩の前方」「肩の後方」に分かれます。

野球肩における障害

肩上部の痛み

  • 棘上筋、棘下筋
  • 肩峰下滑液包
  • 肩甲上神経 など

肩前方の痛み

  • 肩甲下筋、上腕二頭筋長頭腱
  • 腱板疎部
  • 関節唇 など

肩後方の痛み

  • 上腕三頭筋長頭、棘下筋、小円筋
  • 後方関節包
  • 菱形筋、広背筋 など

投球フェーズによる肩の負担

投球動作はどんな守備でも必要ですが、ここでは投手の投球フェーズによる肩への負担について解説いたします。

投球フェーズ

ワインドアップ

投球の一番はじめの動作で、足を持ち上げて膝の位置が一番高くなるまでを表します。肩の痛みが出ることはありませんが、体幹バランスやフォームの崩れがあると、これ以降のフェーズで生じる肩の痛みの根本原因になります

早期コッキング

ワインドアップから足が地面に接地するまでを表します。肘を曲げた状態で肩の外転動作により腕を振り上げるテイクバックが行われ、肘が一番高い位置いわゆる「トップの位置」にきた状態です。外転時に肩甲骨の挙上が行われないと、スムーズに肩が外転できずに、肩の痛みとなって現れる可能性があります。

後期コッキング

持ち上げた足が地面に接地するまでから肩関節が最大に外旋するまでを表します。ボールが一番後ろに引かれ、いわゆる「胸を張った」状態です。外旋時に肩甲骨がしっかり固定できていないと、スムーズに肩が外旋できずに、肩の痛みとなって現れる可能性があります。

加速期

トップの位置からボールが離れる瞬間までを表します。いわゆる「リリース」の時期です。肩の外旋から内旋による負荷がかかり、肩の痛みが出やすいフェーズです。

リリース減速期

ボールが手から離れた直後を表します。肩の内旋と前腕の回内により、肩の痛みだけでなく肘の痛みも出やすいフェーズです。

フォロースルー期

腕をふり抜き、肘が最大に伸びて投球動作が完成します。肩の後方や肘に負担がかかるフェーズです。

このように投球動作とは、どんなに良いフォームでも肩や肘に少なからず負担がかかるものです。

そのため、野球肩・投球障害肩を予防するために、肩や肘への加わる力を極力少なくする必要があります。次にお伝えする投球フォームのポイントがとても重要になります。

投球フォームの3つのポイント

技術的な投球フォームの前に、まずは運動学的に肩への負担を最小限にする3つのポイントを説明いたします。

1.テイクバックでいかに腕を楽に外転させるか

早期コッキング期での腕の振り上げには外転動作が必要です。

テイクバックで肩に痛みがあれば、肩の外転が上手くいっていません。

この外転が上手くいくためには、「肩の内旋」を意識し過ぎるあまり「肩の伸展」が入らないようにして、「胸郭のねじり・可動性」と「肩甲骨の挙上」がちゃんと行われることが大切です。

さらに「肘の柔軟性」が不足していると、肘を曲げたスムーズな肩の外転に影響を与えます。

腕がスムーズにリラックスして外転できるかが、第1のポイントになります。

ちなみに、この時に負荷がかかりやすいのは肩の前側の烏口突起の方向で、靱帯や腱の軟部組織腕を傷めやすいです。

2.肘が下がらずにいかに最大外旋させるか

後期コッキング期では、肘が下がらず挙上した位置で肩の外旋運動が必要です。

外旋時に肩の痛みがあれば、「股関節・胸郭の可動性不足」のために体が前に突っ込み肘が下がってしまっていたり、「肩甲骨の後傾と固定」が上手くいっていません。

この外旋が上手くいくためには、「体幹バランス」「鎖骨の後下方への回旋」がとても大切になります。

肘が下がらずに肩甲骨を固定したまま最大外旋できるかが、第2のポイントになります。

ちなみにこの時には、肩関節そのもの「骨」に負荷がかかりやすいです。

3.リリースでいかに肘を伸ばして最大の力で腕を振れるか

投球動作で肩・肘に最も負担がかかるのが、リリースからフォロースロー期にかけてです。

リリースで最大に力が発揮できなければ、外力に負けてしっかり腕を振り下ろすことができません。

この時の動作は「肩の内旋・内転」で、これを最大限発揮するためには「肘の伸展」「前腕の回内」が必要になります。

肘が伸びず、前腕が硬く手首の回内が不足していると、肩関節が代償してしまい肩の痛みとなって現れます

いかに肘を伸ばして腕を振れるかが、第3のポイントになります。

ちなみに、この時に負荷がかかりやすいのは肩の後ろ側になります。

縦巻き横巻の法則と投球フォーム

一般的に言われているピッチャーの投げ方には大きく分けて、「オーバースロー」「スリークォーター」「サイドスロー」「アンダースロー」の4種類があります。

実は自分に合う投げ方は、生まれ持っての特性によってある程度決まっているのです。

指導者によって無理に変えられてはいけません。ボールを投げる本人だけでなく、指導者には是非知ってほしい内容です。

縦巻き横巻きの法則といって、人は右半身と左半身では対称ではなく、どちらか一方が縦方向の走行、もう一方が横方向の走行になっていて、これで身体のバランスをとっているという法則があります。

縦巻き横巻きの法則

縦巻き側で投げる場合にはオーバースローに近いフォームになり、横巻き側で投げる場合にはサイドスローに近いフォームになります。

肩だけでなく「腰の回転方向」も縦巻きなら縦方向、横巻きなら横方向になり、自分に合ったスムーズな投球フォームになります。

縦巻き側で投げているのにサイドスローで投げようとしたり、横巻き側なのにオーバースローで投げようとしたりすると、自分に合わない投球フォームとなり、ピッチングで結果が出ないだけでなく、肩や体を壊してしまいます

当院ではどんな方にも、まず最初に「縦巻き横巻きの診断」を行い、スポーツ選手にはご自身に合った投球フォームをお伝えしています。

スリークォーター・アンダースローに関しても、実は投球側では縦巻き回転しているか、横巻き回転しているので、「オーバースロー気味のスリークォーター・アンダースロー」か「サイドスロー気味のスリークォーター・アンダースロー」に分かれます。

実際には、一人一人ボールの投げる角度は微妙に違うので、縦巻き横巻きの診断と共に、肩と体が馴染む自然なフォームを探していきます

参考までにプロ野球選手の5人の縦巻き横巻きを紹介します。

  • 山本由伸投手 (右投げ) 右・左
  • 田中将大投手 (右投げ) 右・左
  • 今永昇太投手 (左投げ) 左・右
  • 大勢投手 (右投げ) 右・左
  • 斎藤佑樹投手 (右投げ) 右・左

※斎藤佑樹投手はもっと結果を残せる選手でしたが、自分本来の右横巻きではなく、右縦巻きオーバースロー気味の投球を続けていました。右横巻きに気づいて投げてほしかった投手の1人です。

野球肩・投球障害肩の原因

肩関節そのものの問題は確かにありますが、実はもっと根底に原因があります。投球動作はもちろん、日常生活で気づかぬうちに肩に負担をかける原因をつくっています。肩関節だけでなく全身を考えた次のような原因が考えらます。

①体のゆがみ (★最初の原因)

肩関節は人体で一番可動域が大きい関節です。猫背やストレートネックなど体のゆがみがあると、肩甲骨と共に肩関節の左右の位置にもゆがみが生じてしまい、動きやすい関節だからこそ日々負担をかける生活を続けて傷めてしまいます。

野球肩の最初のきっかけは、このように体のゆがみが関係します。すでに野球肩になっている方には、肩関節自体の治療と共に、肩関節のバランスに影響する体のゆがみも整えていくことが大切です。

②体幹バランス不足と力み (★★根本的な原因)

技術的な投球フォーム以前に、足腰がしっかりした安定した体幹バランスがあることが大切です。

「①体のゆがみ」ととても関係するものです。

下半身がしっかりすると、全身がバネのように柔軟でかつ力強く使えます上半身には余計な力みがなく、肩に負担がかからない投球が可能になります。

体幹バランスが良くなるためには、まずは筋力をつけるよりも、肉体疲労・精神疲労・内臓疲労など疲労回復をはかることです。その中でも内臓疲労いわゆるお腹の健康状態が大事になります。

健康なお腹であればちゃんと腹圧がかかり、体幹バランスとして自然に働いてくれます。その上で筋力や柔軟性などのトレーニングを行うことをお勧めします。

体幹バランストレーニングの前に、食生活などを見直して、腹圧が入るお腹を目指しましょう。

③投球フォーム (★★技術的な原因)

先にご覧いただいた「投球フォームの3つのポイント」「縦巻き横巻の法則と投球フォーム」が基本的なものになります。

この基本が分かった上で、さらに技術的な問題を克服するためには、投球に必要な筋力や柔軟性、メンタルの強化が必要になります。

ウォーミングアップのキャッチボールでは肩が痛くなくても、遠投や全力投球、試合など緊張した場面での投球で肩に痛みが走る場合、瞬間的に体のどこかに余計な力みが入っています

体に無理をかけず、馴染ませるように投球に必要な筋トレや柔軟性のトレーイング、そしていろんな場面を想定したイメージトレーニングにより、投球時の力みを無くしていてフォームを安定させていきます。

技術的な指導は現場の監督やコーチから受けながら、自らも積極的にこのような知恵を活用して、自分なりの投球フォームを掴んでください。

野球肩・投球障害肩に対する当院の施術方法

肩の痛みがどの投球フェースでどこに出ているかを詳しくチェックしていきます。

技術的な投球動作の前に、投球に必要な体幹バランスや柔軟性をさらに詳しくチェックして、ご自身にも自覚してもらいます。

①瞬間体幹バランス調整

まず縦巻き横巻き診断により自分に合った体の使い方を知り、次に現状の体幹バランス・筋力チェックによりバランスの崩れも自覚し、頭部に行う瞬間調整で体幹バランスを整えます

立位や座位での本来持っている体の軸を取り戻し、余計な力みが出にくい状態になります。

②足元から全身のゆがみを調整

さらに投球動作でも肩に負担がかからないように動作時の体幹バランス整えていきます。

肩関節は単独では最大限に動かすことができません。肩甲骨や肋骨・背骨の動き、骨盤や下肢による体幹バランスが働くことにより、初めてちゃんと肩関節を動かすことができます。

体の土台となる足元から順番に下から、下肢→骨盤→背骨→肋骨→肩甲骨とバランスを整えることで、野球肩に影響する肩関節以外の要因を取り除いていきます。

足の施術

うつ伏せの施術

③お腹・内臓の施術

お腹が硬く縮こまっていると、投球時に腕の可動域制限となり、さらに腹圧が入らず足腰に粘りが出せなくなります。

食事やストレスの影響でお腹が硬くなっていても、多くの方は気づいていません。当院ではスポーツ全般に腹圧がちゃんと入るお腹に整え、真の体幹バランスを取り戻すお手伝いをしています。

お腹の施術

④肩関節・肩甲骨への施術

施術の最後は、肩関節と肩甲骨に対する直接施術になります。

これには施術する順番が大切で、①肩・肩甲骨の筋肉へのリラクゼーション施術、②肩・肩甲骨の筋肉・神経への施術とトレーニング、③複雑な投球動作のトレーニング、と筋肉が最大限にゆるんで肩と肩甲骨の可動域を広がる状態をつくりながら、①~③を繰り返して施術していきます。

肩甲骨は可動性だけでなく、後期コッキング期の固定も必要なため、肩甲骨の役割はとても重要になります

①では、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋といった肩のインナーマッスル、小胸筋・前鋸筋・菱形筋といった肩甲骨のインナーマッスル、三角筋・大胸筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋といった肩のアウターマッスルをはじめに徹底的にゆるめていきます。

②では、棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小胸筋神経とトレーニングにより、細胞レベルで筋肉の働きを改善していきます。

③では、テイクバックからリリースまでの肩の調整により、肩がスムーズに動くようにコンディショニングしていきます。

肩甲骨はがし横向き

肩関節の施術

⑤投球フォーム改善とセルフケア指導

肩の痛み具合により、はじめのうちは投球フォームの改善まで出来ないこともあります。まずは日常動作での肩痛改善からスタートです。

そして徐々に、シャドーピッチングや近い距離での投球、そして距離を伸ばしたり遠投や全力に近い投球でのフォーム改善を目指します。

多くの場合、縦巻き横巻きの法則がフォーム改善に役立ちます。

セルフケアに関しても縦巻き横巻きの法則が役立ち、あなたに合った方法をいろいろアドバイスしますので、自分なりにアレンジして取り入れてください。

投球に一番必要なのはバランス力です。筋トレや柔軟性は必要ですが、食生活の乱れやストレス・疲労を溜めず、基本的な体幹バランスを維持できることを心がけてください。

投球フォーム

院長の私自身二十歳の時に野球肩になり、全力で投げられず大好きな野球がつまらない経験をして苦しみました。

投手ではないですが、遠投で肩に自信があった外野手をしていまし。キャッチボールをした後は、投球時だけでなく1週間くらい肩の後ろ側に鈍痛が続くような状態でした。

もともと体幹バランスはいい方でしたが、何らかの影響で全身の連動を使えず、肩に力みが入る投球フォームになっていたのが原因でした。

野球肩で野球を楽しめない方を減らしたいと思っています。少しでも肩の改善率を上げるお手伝いができたら幸いです。

野球肩・投球障害肩でお困りの方はお気軽にご相談ください。

当院には、肩に注射やシップ、筋肉を揉むだけでは楽にならない野球肩・投球障害肩の患者さまが来院されています。

また食事やセルフケアなどを覚えて根本的に改善したい方、副作用がない方法を考えている方など、お気軽にご相談ください。

当院へのアクセス

いぶきカイロプラクティック
〒350-1126
埼玉県川越市旭町1-1-18 フローラル・幸 2階
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不定休 (営業案内をご覧ください)
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